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 平成19年8月10日(金)〜16日(木)Vol.212
 
 ■夏休みキャラバン〜ディープな東北秘湯めぐり
今年のお盆休みは東北の温泉めぐりと前から決めていた。それも、秘湯とされる山奥の温泉ばかりだ。
中三の長男は「平成ガキ大将養成キャンプ」で中津川に行っていて不在。
そして娘の方は行くところが温泉ばかり、仲良しのお友だちも来ないと聞くや、即座に「行かない」と宣言した。
おばあちゃんちで気ままに過ごし、映画を見に行ったりしたいらしい。
これで夫婦2人、思うさま秘湯を攻めることができる。
今回は金曜日の夜トレーラーを牽いて出発し、福島で一泊。秋田に抜け、日本海沿いに北上し青森に入って津軽海峡、下北半島の方まで行ってみるつもりだ。
できれば、下北半島の先端、本州最北端まで到達したい。
そして、大間崎でマグロを食す。
あとは本州の背骨沿いに南下し、再び秋田、岩手などの温泉を経て帰途につく、というプランである。
今回は海沿いの混浴露天あり、山の中の野湯ありと、かなり濃厚なメニューを考えている。さて、目標をどれだけクリアすることができるだろうか。
 
■1泊目:福島「東日本健康ランド カッパ王国」
 これからお盆休みに突入しようという車でいっぱいの東北自動車道は、ゴールデンウィーク前夜ほどのひどい渋滞ではなかった。
 しかし、突然渋滞したかと思うといきなり流れだし、また突然止まってしまったりといった走行は一瞬たりとも気が抜けず、けっこう疲れる。
 どうやら上り坂や下り坂でスピードを落としすぎてしまうサンデードライバーが多くて、停滞してしまうようだ。
 ようやく福島飯坂インターチェンジあたりまでやってきたのは、深夜1時頃であった。
 わたしたちは飯坂ICでいったん降り、5キロほどのところにある健康ランドに立ち寄った。
 ここは朝7時まで営業しており、温泉もあるとのことだった。
 温泉は完全循環で特徴はなかったが、まずは入浴を果たせたので気分よく駐車場に戻ってP泊することにした。
 駐車場はたいへん広く、近くに民家もない。暑い夜だったのでクーラーを回し、快適に過ごすことができた。
■2日目:飯坂温泉「鯖湖湯」
 P泊場所の「カッパ王国」からはわりと近かったので、飯坂温泉に立ち寄ってみることにした。
 飯坂温泉街は狭くてトレーラーを置ける場所がないと聞いていたが、以前から名前に惹かれていたため、行ってみたかったのである。
 わたしたちは温泉街に乗り入れるのをやめ、コンビニの駐車場にトレーラーを停めることにした。
 夫はそこで買い物をし、共同浴場の「鯖湖湯」へはわたし一人で行くことにした。
 で、なぜ「飯坂」の名前に惹かれていたかというと、かつての愛読書、山岡荘八著の「伊達政宗」の影響が大きい。
 伊達政宗の側室に「飯坂の局」という女性がいたが、彼女はここ飯坂の出身なのである。
 そして、飯坂町古舘は飯坂の局が生まれた城のあった場所だ。現在は「古舘公園」となっており、城の名残を留めるものは残っていないという。
 さて、温泉街の中心街を200メートルほど歩いていくと、突きあたりになんとも風情のある建物が見えてきた。「ほりえや」という旅館だ。
 鳥居のところには石碑が、さらに奥には鯖湖神社と「湯かけ観音」が立っている。
 「鯖湖湯」の歴史は4世紀、「古事記」や「日本書紀」の時代にまでさかのぼる。
 景行天皇(在位71年〜130年)の時代、日本武尊(やまとたけるのみこと、景行天皇皇子)が東征のおりに入浴して病を癒したと伝えられている。 
 また元禄2年(1689年)には「奥の細道」の筆者・松尾芭蕉が飯坂に立ち寄り、「鯖湖湯」に浸かったと言われている。
 「鯖湖湯」の建物は鯖湖神社の向こう側に建つ。明治22年に建てられ、平成5年12月に当時の姿をそのままに改築されている。
 日本最古の木造建築共同浴場で、道後温泉「坊ちゃんの湯」(明治27年築)より古いそうだ。
 こちらが正面の出入り口。ヒバ作りの外観はたいへん立派で、堂々たる構えを見せている。
 女湯の扉を開けて中に入る。 
 わたしは浴室の古風な佇まいに目を奪われ、サンダルを脱ぎながら口を開けて見とれていた。
 すると、突然後ろから「お客さん、お客さん」と呼びとめられて驚いてしまった。
 入ってすぐのところに受付があって、おじさんが座っていたのだ。
 わたしは浴室に気を取られて気づかず、そのまま脱衣所に入ってしまうところだった。
 脱衣所と浴室はひと続きにつながっており、いかにも共同浴場らしいスタイル。
 御影石づくりの浴槽には無色透明のお湯が掛け流されていた。
 先客は地元の方であった。
 「おはようございます」と挨拶をすると、笑顔で返してくれた。
 洗い場にシャワーはない。地元の方は浴槽の傍らにべったりと座りこみ、洗面器で湯をすくって洗髪をしている。
 わたしは上がり湯で掛け湯をし、湯に浸かった。しかし、とても熱い。足しか入れられない。それも、ほんの5秒ほどだ。
 思わず「あっちっち」と声を上げると、先客の女性が「薄めてくださいね」と優しく声をかけてくれた。
 壁には、「最近、観光で共同湯を訪れる人が増えています。中には熱いお湯が苦手な方もいらっしゃるので、42度くらいにうめてください」と書かれた張り紙があった。
 どうやら観光客に好意的な温泉街のようで嬉しい。
 お言葉に甘え、上がり湯のところにあるホースを浴槽に入れて水を注ぐ。その箇所だけ少しぬるくなったので、すかさず水を止めて湯に浸かる。
 源泉温度は51度。浴槽の中は45度以上に違いない。このまま水を入れていけば、もっと浸かっていられるだろう。たが、それでは熱湯が好きな地元の方に申し訳ない。
 「観光客が来たからぬるくなっちゃった」なんて思われるのも嫌なので、少し浸かれただけで満足することにした。
 それにしても、地元の人たちはあの激アツのお湯を頭から被って洗髪をしている。熱いの駄目なわたしは呆れるやら、感心するやら。
 あまり暖まると汗が引かないので、わたしはすぐに上がった。バスタオル巻きのまましばらく脱衣所に立ち尽くしていたが、やっぱりなかなか汗が乾かない。
 気温自体がひじょうに暑いので、何時間ハダカで立っていたところで引かないだろう。
 わたしは汗ダラダラのまま、先客に挨拶をして「鯖湖湯」を後にした。
 右は「鯖湖湯」横の湯かけ観音と鯖湖神社。
 わたしは来た道を引き返しながら、左右に並ぶ商店を眺めて歩いた。
 すると、とある商店のガラスに05年のNHK大河ドラマ「義経」のポスターが貼られているのに目がとまった。その写真が主役のタッキーだったら、一瞥して終わりだっただろう。だが、源義経の家来、佐藤継信・忠信兄弟が2人だけで映っていたから、あらっと意外に思ったのだった。
 その時は単純に「佐藤兄弟は奥州の人だから、こちらでは人気があるのね」と結論づけていた。
 しかし、後で調べてみると、佐藤兄弟は奥州の人どころか飯坂出身であることが判明し、非常に驚いた。
 佐藤兄弟の父・佐藤基治は奥州藤原氏の一族であり、飯坂町の旧名である信夫を拠点として郡一帯を治めていたという。
 飯坂温泉の西にある大鳥城は佐藤氏の城であり、継信・忠信兄弟はこの城で生まれた。
 その大鳥城から見下ろせる場所に建つ医王寺は佐藤家の菩提寺だ。義経とともに連戦し壮絶な最期を遂げた継信・忠信兄弟は、ここに奉られている。
 彼らの両親、佐藤基治・乙和御前の墓所もある。
 松尾芭蕉はこの寺にも立ち寄り、継信・忠信兄弟を偲んで「笈も太刀も五月に飾れ紙のぼり」と詠んだ。
 そして、芭蕉が奉納した笈は今も、この寺の宝物殿に安置されているという。
 飯坂は単に湯の街というだけでなく、想像以上に奥深い街であった。
 他に共同浴場が6カ所ほどあるし、医王寺詣でもしたいので、ぜひまた訪れたいと思っている。(ちなみに「片岡鶴太郎美術館」もあります)
■2日目:岩手県「峠山パークランドオアシス館」
 再び東北自動車道に乗り、早くお昼ごはんを食べたいのを我慢して走ること約250キロ。
 途中から岩手県に入り、GWに訪れた平泉を通り過ぎる。
 お昼過ぎになって北上ジャンクションから秋田自動車道に乗り換え、ようやく目指す錦秋湖サービスエリアに到着した。
 このサービスエリアには温泉とキャンプ場が併設されているというのが、ちょっと珍しい。
 特に温泉の方はガイドブックに「掛け流し」マークがついているため、どんな温泉なのかな? と興味津々。
 サービスエリアの温泉というと諏訪湖サービスエリアが有名だが、循環である。掛け流しというのは珍しいので、立ち寄ってみることにした。
 ガイドブックには温泉を利用すればキャンプ場は無料になる、と書いてある。近くには錦秋湖という、なにやら風光明媚な印象を受ける名前の湖もあり、どんな感じなのか非常に興味があった。
 SAに入る。ごく普通のSAの建物の傍らに、オアシス館に渡る陸橋があった。どうやらオアシス館はSAの外に位置していて、外部からの利用が可能なようだ。
 従って、そのすぐ前にあるキャンプ場を、ハイウェイにいる車が直接乗りつけて利用することはできないようだった。
 ガラスで覆われているため息苦しさを感じるほど蒸し暑い陸橋を通り、オアシス館側に渡り終わった。
 キャンプ場にはキャンピングカーの姿もあり、何組かの家族連れが利用していた。
 動物コーナーもあり、2匹の白ヤギが暑い中草をはんでいた。
 お昼ごはんは後回しにして、わたしたちはまず温泉に入った。
 お湯はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉で、無色透明。さらっとしていて特徴はない。
 露天風呂のみわずかな硫化水素味を感じた。
 内湯はなんだか循環ぽいなと思っていたら、やはり分析表に「露天風呂は掛け流し、内湯は循環」と書かれてあった。
 露天風呂から湖でも見えるのかなと期待していたが、ガラスブロックの塀の向こうは駐車場だった。
 景色にも特色のない泉質もちょっとガッカリしたが、お昼ごはんに期待をかけてレストランへ。
 わたしは岩手産古代米で作った冷麺を、夫はイワナの蒲焼き。
 冷麺はおいしかったが、汁にお酢の酸味が足りなくてしまりのない味だった。イワナの蒲焼きは、夫が「味噌だれがイワナの味を殺してるなー」とつぶやきつつ食べていた。

今回入った温泉
 東日本健康ランド カッパ王国(福島県) 飯坂温泉 鯖湖湯(福島県)
 錦秋湖温泉(岩手県)
 
  

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