アルパこまくさから国見温泉は、地図で見る限りでは非常に近い。駒ヶ岳を挟んで背中合わせに位置していると言ってもよさそうだ。
しかし、2カ所を直接つなぐ道はなく、いったん田沢湖方面に降りてR341号線に乗り、R46号線に乗り換え東へ。仙岩峠を越えると、そこから先は岩手県雫石町である。
やがて国見温泉へと登っていく山道が現れた。ところどころ「落石注意」の標識が現れる険しい道を上っていく。 |
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そろそろ国見温泉に到着、という頃、右側の山の斜面に「国見キャンプ場」が見えた。
よければここで一泊しようと思っていたキャンプ場である。しかし駐車場はたいへん狭く、またキャンプサイトはそこから奥へ入ったところにあるようだった。
さらに登る。
右側に目的の石塚旅館が見えたと同時に、わたしたちは突きあたりに行きあたってしまった。どんづまりは「森山荘」という宿であった。
わたしたちはトレーラーを数十メートルバックさせ、かろうじて石塚旅館より一段下に位置する駐車場にトレーラーを入れた。
そんなに広い駐車場ではなく、少々強引だなとは思ったが、ここに停めるより他はない。
この駐車場は主に登山者が停める場所のようだ。登山装備に身を固めた人たちが車のドアを閉め、歩き出す姿が見られた。 |
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車から降りると、あたりに硫黄の香りがぷーんと漂っていた。ふと、1メートルほど先の地面を見てビックリ。
細かい砂利が敷き詰められた駐車場の地面から、なんと温泉が湧き出ているではないか。
どこからか排水が流れてきているのかと思ったが、そうでもなさそうだ。ここを掘ったら自然湧出の露天風呂ができるに違いない。それも、浴槽の底からプクプクと湧き出る極上のヤツが。
うーん、たまらんっ。 |
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歩いて石塚旅館へ。
建物はペンション風で意外と可愛らしいものだった。まるで田舎の小学校のようにも見える。
看板には開業1804年と書いてあった。1804年は江戸時代の文化元年にあたり、11代将軍・徳川家斉の時代である。
開湯当時は盛岡藩(藩主・南部家)が所有する湯治場であったという。
外観はペンション風だが、一歩中に入ると時が止まったかのような湯治場の雰囲気に満ちていた。湯治場はこうでなくちゃ。 |
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小さな帳場の窓の向こうに、経営者とおぼしきおじさんとおばさんが2人並んでいた。
入浴を願い出ると、受付時間より30分早かったようで、でも、まあいいでしょう、と受け入れてくださった。
親切な方たちでよかった。
わたしたちがまず最初に向かったのは、混浴の露天風呂。建物の裏手から少し歩いたところに簡素な湯小屋がある。 |
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横に長い石造りの浴槽に、美しい緑色をしたお湯が注がれていた。まるでバスクリンを入れたような、という形容がぴったりな、色鮮やかなエメラルド・グリーン。
だが、もちろん入浴剤などは入っていない。
硫黄泉にある種の藻が混じっているために緑色なのだ、という説明をどこかで読んだ記憶がある。
硫黄の匂いに苦そうな匂いが混じり、かすかに灯油のような匂いも感じられる。独特の、しかしわりと嗅ぎ慣れた匂いでもある。 |
新潟の月岡温泉、長野の熊の湯温泉も同様の緑色の湯で、同じ苦そうな匂いの硫黄泉だ。
しかし、月岡温泉は黒くて大きな湯の花が特徴で、もっと緑色が薄い。
熊の湯温泉は日本で一番美しいグリーン色をした温泉だと思うが、濁りが強くて国見ほどの透明感はない。 |
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わたしは混浴の露天風呂には入らず、旅館の内湯に引き返した。
女湯の浴室は小さな内湯とすぐ外にある露天風呂のひとつずつだけ。
しかし、旅館の奥に進めば、新しく増設された綺麗な大浴場もある。シャワーもあって広いので、ゆっくりしたい方はそちらへどうぞ。 |
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こちらは露天風呂。しばらく誰も入らなかったらしく、水面にうっすらと湯の花の膜が浮いていた。
そこへストンと身を沈めるのは気持ちがいい。
本当に、なんと美しい色だろう。 |
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湯に浸かって見上げると、景色はこんな感じ。混浴の露天からの眺めも大差ないので、女性が無理して混浴に入ることもないと思う。
こちらの方はしばらく貸し切り状態で、非常にゆっくりと堪能することができた。
ところでこの緑色のお湯、ただ透明なだけなのかと思っていたら、さにあらず。湯船の底には凄い量の湯の花がどっさりと堆積していたのである。 |
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底にたまりにたまった湯の花をすくいあげてみると、ほら、こんなにごっちゃり♪
誰もいないことをいいことに、わたしは浴槽中を引っかきまわして湯の花を撹乱。湯の花が舞い散って、見事な緑白色の湯になった。 |
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こちらが前述した新しい大浴場、「薬師の湯」。 |
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シャワーを備えた立派な浴室に広い浴槽、お湯はもちろん掛け流しだ。今回はこちらには入らなかったが、次にはぜひ利用しようと思う。 |
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石塚旅館を出て、駐車場に戻った。
崖の上にそびえ立っているのは石塚旅館の旧館と新館らしい。
窓から宿泊客が数人顔を出して、バックで駐車場から出ようとしているトレーラーを見物していた。
いいなあ、こんな空気と景色のよい山奥で数泊して、極上の温泉を堪能して、命の洗濯をして。
いつかきっと、わたしもあの窓から外を眺めるんだ。 |