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 平成19年8月10日(金)〜16日(木)Vol.212
 
 ■夏休みキャラバン〜ディープな東北秘湯めぐり Part7
 
■5日目:奥八九郎温泉へ
 朝一番で酸ヶ湯温泉に突撃し野望を果たしたわたしは、次なる秘湯を求めて八甲田の地をあとにした。
 またまた山越え谷越え川を越え、ようやく東北自動車道に辿り着く。
 次なる目的地は玉川温泉。
 ・・・だったが、その前にちょっと立ち寄ってみたい秘湯があった。
 その名は「奥八郎温泉」。温泉博士の益子師匠がかつて教えてくれた秋田県にある野湯で、天然のジャグジーだとのこと。
 「手前に八九郎温泉があって、その奥に奥八九郎温泉があって、そのまた奥に奥奥八九郎温泉というのがあるんだよ」という師匠の言葉が、わたしの頭に鮮烈に刻み込まれた。
 いつか行ってみたい。そう思いつつ4年は経っていただろうか。
 子ども連れじゃ無理だし、あんなでっかいトレーラーを牽いていたら、なおのこと無理。そう思って、奥八九郎探索など絶対実現しないものと思っていた。
 だが、今回の旅は夫婦2人だけ。トレーラーをどこかに切り離していけば行けるかも。
 夫が行ってもいいと言うかどうかわからなかったが、とりあえず場所だけは下調べしておいた。
 で、頃合いを見計らって恐る恐る、「奥八九郎温泉というのがあって、山の中に湧いている野湯で、天然のジャグジーだって益子さんが・・・」と夫に切り出してみた。
 夫の反応は意外にも、非常に乗り気なものであった。山の中の野湯と聞いて、ワクワクしているように見えた。
 わたしたちは小坂インターチェンジで降り、某所でトレーラーを切り離して、印刷してきた地図が指し示す場所に到着した。しかし、それらしき光景が見つからない。
 もう諦めようか、なんて言いだすかと思っていた夫が、意外なほどの熱心さで探し回ってくれた。わざわざ民家に入っていって場所を聞いてきてくれたときには、ちょっと感動。
 実を言うと、インターネットの温泉ファンサイトに載っていた地図は完全な間違いだった。そこには確かに温泉マークがついていたものの、すでに廃棄された源泉だったのだ。
 夫がその温泉マークの近くにある民家で尋ねたところ、以前は確かに旅館があって温泉が出ていたという。
 民家のご主人が丁寧に奥八九郎への行き方を教えてくださり、わたしたちはその通りに進んだ。すると、わりとあっさりと「奥八九郎温泉2.7キロ」という標識を発見。
 なんだー、看板があるくらい有名だったのね。
 だが、その先は舗装されていないダートコース。さすがのハマーもどかんどかんと揺れる揺れる。
 ダートの2.7キロって、けっこう長くてしんどい。
 時々、乗用車とすれ違った。上半身裸の男性が運転していたりするので、きっと奥八九郎からの帰りに違いない。
 乗用車同士でもすれ違えないほどの細い道なので、2度ほどバックするはめになった。
 さらに分岐路があったが、看板の案内に従って左に折れる。
 そして唐突に、そう、本当に唐突という形で奥八九郎温泉は現れた。
 それまで青々と木や草が茂っていた光景が一変し、赤茶けた土が剥き出しになった所に赤褐色の湯がボコボコと沸き出している。
 もう一目見ただけで、ネットに載っていた奥八九郎温泉だとわかる強烈な光景だ。
 だが、あれ。これは確か、奥奥八九郎温泉なのではないかしら。とすると、奥八九郎温泉は通り過ぎてしまったのか?
 あれこれ考えながらも、わたしは念願の野湯に辿り着いた喜びでいっぱいになった。
 さっそく夫が服を脱いで入浴の準備。
 だが、そこへ恐るべき敵が猛攻撃を仕掛けてきた。
 アブである。
 ハエよりふたまわりも大きな灰色っぽいアブ(ウシアブ?)が緑色の目を光らせて襲撃してくるのだ。
 それだけならまだしも、スズメバチよりもでっかい黄色の巨大アブがブンブン羽音を立てて迫ってくるさまは、ウシアブにも増して恐ろしい。
 アブは刺すというより尖った顎のような牙で皮膚を噛んで吸血するので、とっても痛いのだ。
 わたしはアブに備えて持ってきた電撃ラケットを振りまわし、夫が服を脱ぐのを援護した。
 →湯に浸かるのに成功した夫。にっこり笑顔だが、実はかなり熱い湯に必死で耐えている。
 「は、早く撮ってー!」
 湯の熱さに加えてアブの攻撃が凄まじく、一瞬浸かっただけで退散。ざばっと上がり、大急ぎで服を着込む。
 お湯をなめてみたが、見事に鉄味だった。
 ぶぉこぶぉこっ! という感じでお湯が底から噴き出している。まさに天然のジャグジーという言葉が嘘偽りのないものだと感心させられた。
 しかし、ジャグジー部分は浴槽の底全面ではない。1カ所だけに開いた穴から湯が自然湧出し、そのまわりの浴槽を人工的に掘ったのかも知れない。
 この温泉、過去に掘削して湧いたはいいが、山奥のため放置されてしまったものだとも聞く。山奥と言ったって酸ヶ湯温泉ほどじゃないのに、どうして放置されたんだろう。
 上のメイン浴槽(?)から川のように湯が流れ、道路に近い方の穴に注ぎ込まれている。
 そちらは緑色がかっていて、泉質の違う温泉が注がれているような印象すら受ける。
 緑の湯にも入ってみた。こちらはジャグジーなし。上流から流れこんだものなので、お湯がぬるめだ。
 ところで、奥八九郎温泉という名前の由来について。わたしは、この野湯の発見者が八九郎さんなので「八九郎温泉」という名がついたと思っていたが、どうもそうではないようだ。
 八九郎さんのサイト「八九郎の温泉ホームページ」によると、ここを「ハンドル名由来の温泉」と書いてある。
 さらに、この近くに「八九郎」という名の集落があることから、氏は地名を取って温泉名を名づけたと推測できる。
 さて、再び電撃ラケットを振りまわして服を着る夫を援護していると、乗用車がやってきた。
 一人の青年が降りたち、入るでもなく様子を伺っている。彼と少し言葉を交わしたあと、わたしたちはハマーに乗りこみ、さらなる奥を目指した。
 まだ奥奥八九郎温泉があるかも、と思ったのである。男性が現れてしまったため、わたしは入浴していなかった。
 だが、奥へ行っても行っても、温泉は見つからなかった。
 「やっぱりさっきのが奥奥八九郎温泉なんだよ」
 ということになって、引き返す。先ほどの青年がまだ奥奥八九郎温泉のそばに立っていた。
 「奥はありましたか?」と聞かれたので、ありませんでした、と答える。
 その青年によると、集落の中に八九郎温泉があって、また少しこちら寄りに奥八九郎温泉があるらしいが、見つからなかった、とのことであった。
 奥八九郎温泉はわかりづらい場所にあるらしい。
 途中にあった看板は、ここ(上の画像で夫が入った温泉)を奥八九郎温泉だとしているが、奥奥八九郎温泉とするのが正しい。
 そんな会話を交わしたあと、青年は車に乗りこんで立ち去っていった。
 彼がお湯に浸かったのかどうかは不明だが、わたしが「じゃあ、ここに入る」と言ったのを聞き、遠慮して立ち去ったような気がする。
 誰もいなくなったので、わたしは車内で服を脱ぎバスタオルを巻いて、ひとり温泉に向かった。
 夫は電撃ラケットで援護してくれない。アブを嫌って車内から写真撮影だ。この薄情者〜。
 追い払ってくれる人もいないので、わたしのまわりには次々とアブがやってくる。灰色のや、大きな黄色いのやら。
 いやーん、あっちへ行けー。
 サウナタオルをバタバタさせつつ、熱い湯にそろそろと浸かる。
 ううっ、熱いの苦手なわたしには少々激アツだぞ、これは・・・。
 我慢して肩まで浸かる。頭からすっぽりとサウナシートを被って、アブを防御。しかし、顔めがけてブンブンと飛んでくる。
 えーい、しつこいヤツじゃ。
 もっとお湯を堪能したかったが、ゆっくりできる状況ではない。湯は熱いし、アブは襲撃の手をゆるめず果敢なアタックを繰り返してくる。
 顔なんか噛まれたらたまらない。わたしはアブを手で払いながら湯から上がった。
 サウナシートの上にマイクロファイバー繊維の薄手の大判タオルを巻いて肩と背中を防御しつつ、緑の湯に足を浸けてみる。
 こちらはぬるめだが、入浴はためらわれた。ただちにシャワーで体を流したくなるような濁りっぷりだったので・・・。
 もっとこの場で時を過ごしていたかったが、秘湯ムードに浸れる雰囲気ではなかった。わたしは奥奥八九郎温泉の守護神、アブに追い立てられるようにして車に戻った。 
 ハマーの黒い車体にアブがバシバシとぶつかってくる。
 最後はもう「ぎゃ〜っ」って感じで転がり込み、ドアを閉めた。数匹のアブが車内にまで追いかけてくる。どこまでしつこいのか。やっぱり守護神だ。
*奥八九郎温泉へのアクセス
web検索すればだいたいの地理は把握できます。さらに詳しく知りたい人は、メールで質問してください。
*奥八九郎温泉を訪れるにあたっての注意事項
マナーを守れる人だけご利用ください。ゴミは必ず持ち帰りましょう。
レポにも書いたとおり、アブが大量出現します。虫よけスプレーを持参しましょう。キンチョー、キンカン、アース製薬のものはアブにも効くと書いてあります。(ジョンソン&ジョンソンのスキンガードは適用害虫のところにアブがありません)
殺虫スプレーで大量虐殺するのはやめてね。
熊さんなどの野生動物に遭遇しないとも限らないので、ご注意ください。
道が細いので、大きなキャンピングカーは無理でしょう。小さいキャブコンなら大丈夫です。
携帯はドコモもauいずれも圏外ですので、パンク、ガス欠などに備えた十分な装備で行ってください。
八九郎温泉は集落の中の私有地にあるそうですので、無断で立ち入らないようにしましょう。入浴させていただく場合は、礼儀正しくお願いしましょうね。

今回入った温泉
 奥奥八九郎温泉
  

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