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 平成19年8月10日(金)〜16日(木)Vol.212
 
 ■夏休みキャラバン〜ディープな東北秘湯めぐり Part10
 
■6日目:トレーラー、バーストする
 盛岡市街地でお昼ごはんに名物・じゃじゃ麺を食べたわたしたちは、盛岡南から東北自動車道に乗り、夏油温泉へと目指した。
 「なつあぶら」と書いて「げとう」と呼ぶ奇妙なこの温泉は、おそらく秘湯中の秘湯だと思われる。
 これも、かつて人からよいと聞いて、ずっと憧れていた温泉である。
 ところが、東北道を30キロほど走った地点、花巻南インターチェンジを少し過ぎたあたりで、そのトラブルは起こった。
 その時ハンドルを握っていたのは、わたしだった。
 一番左側の車線を走っていると、右から追い越してきた車両の助手席から、男性が身を乗り出すようにして何事か叫んだ。
 夫が窓を開けると、なんと「バーストしてる」と伝えてきていることがわかった。
 夫は「ハザードつけて、ゆっくりブレーキかけて、左に寄せて停まって」と指示。わたしはそれに従った。
 夫が降りて、トレーラーの後部タイヤを見に行った。
 確かに、左側の後ろがバーストしているという。しかし、なんの衝撃も感じなかった。
 バースとしたキャブコンが横転、などという恐ろしい話も耳にしていただけに、あっけないような不思議な感じである。
 幸い、タイヤのスペアは持っていた。
 夫はさっそく三角板をトレーラーの後方に設置し、タイヤの交換にとりかかった。
 この三角板を置かずに高速道路上で停止していると違反切符を切られてしまうので、必ず車に乗せておいたほうがいい。
 連絡したわけではないが、間もなく道路公団の黄色い車両が到着した。中央分離帯に落ちていたタイヤの破片も拾ってくれたという。
 トレーラーの後ろで旗を振ってくれたので、安心である。
 15分ほどでタイヤの交換は終わった。道路公団の車が後ろで援護してくれて、わたしたちは無事に出発して本線に合流した。
■夏油温泉
 北江釣子インターチェンジを降りて、夏油温泉を目指す。
 夏油温泉に向かう専用道路の入り口には「大型車通行不可」の標識が。この先は狭いと判断したわたしたちは手頃な空き地にトレーラーを切り離し、ハマーだけで登っていった。
 この判断は正解だった。
 道路は狭く、夏油温泉の駐車場も乗用車でぎっしり。クラスBのキャンピングカーが一台停まっていたが、大型車は停めるところがなさそうだった。
 夏油温泉は海抜610メートルの栗駒国定公園内にあり、850年の歴史を持つ。
 伝説によると、平家の落人の末裔でマタギとなっていた高橋四郎左衛門が巨大な白猿と戦った翌年、山中深くのいで湯で傷を癒している白猿を見つけて発見したと言われている。
 また、856年に慈覚大師が発見したとする伝承もあるそうだ。
 「夏油とはアイヌ語の「グットオ(崖のあるところ)」が語源とされている。冬は雪に閉ざされて夏しか入れないから、「夏湯(ゲトウ)」になり、さらに日差しで揺らめく湯面が油のように見えたので「夏油」となったという説がある。
 来客は非常に多いが、いかにも山奥の鄙びた温泉地という風情が印象的だ。
 日帰り入浴をするには、まず「元湯 夏油」で料金を支払い、マップと入浴券をもらう。
 そして、ゲート替わりになっている白い橋(上の画像右側)の一部を自分で開けて、くぐるようになっている。これは本館と駒形館をつなぐ渡り廊下にもなっていて、チェックインした宿泊客が従業員に先導されて渡っていく姿が見られた。
 そこから先はフリーだ。真っすぐに進むと、昭和初期を思わせる鄙びた宿が左右に軒を連ねている。
 「元湯 夏油」と、その奥にある「夏油山荘」は同じ経営である。旅館部と自炊部に分かれており、旅館部は本館、別館、駒形館、嶽館で、自炊部は夏油館、紅葉館、経塚館、薬師館などとなっている。
 他にも「昭和館」などの別経営の旅館も並んで建っているので、どこからどこまでが「元湯」の建物なのかわかりにくい。
 ふと建物の中に目を向けると、いきなり湯治客が半裸で涼んでいたりして、ちょっとビックリ。
【 大 湯 】
 建物の端まで行くと、左に降りていく階段がある。けっこうな長さの段を降りていくと、その下に大湯があった。
 5つある露天風呂のうち、もっとも北の端にある「大湯」。混浴だが、脱衣所は男女別になっている。
 午前10時から1時間、女性専用時間になるので、混浴に抵抗がある人は時間を選ぶとよい。
 わたしは何時間も女性専用になるのを待っているわけにもいかないので、サウナシートを体に巻いて混浴に挑戦した。
 サウナシートというのは、サウナ内において発汗を促進する塩化ビニール樹脂素材のシートだ。
 ここ夏油温泉ではバスタオルで湯に浸かるのを禁じているため、ビニール製といえども浸かる際には取り払う必要がある。
 が、多少濡れてもバスタオルみたいに重くならないし、繊維や染みこんだ皮脂汚れなどで湯を汚すこともないので、混浴で用いるには便利な一枚なのである。
 わたしはさっそく大湯の湯船に腰をおろし、足を入れてみた。がっ。
 それは凄まじく熱いお湯だった。5秒以上浸けていられない。分析表によると源泉温度は59.8度。浴槽部分でおそらく50度くらいはあったに違いない。
 なのに、タオルを頭に乗せてのんびり浸かっているおじさんなんかもいる。モンスターではなかろうか。
 これが適温なら、実に最高の露天風呂に違いない。
 目の前は渓谷で、眼下には涼しげな川が流れている。涼みながら川のせせらぎに耳を傾け鳥の声を楽しみつつ、いつまでも湯の名残を惜しんでいたいような・・・。
 しかし、こう激熱では情緒を求めてなどいられない。しかし、湯を冷ますためのホースも見あたらない。水で薄めるのは邪道だが、人が入れないのでは話にならない(先のおじさんはモンスターだから別格)。
 わたしは一瞬だけ腰まで浸かって、上がることにした。いやー、激アツ激アツ。
 この大滝の湯、泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉、pHは6.6で中性。
 白猿が傷をいやしていたというので、「白猿の湯」とも呼ばれている。
 少し白濁しているそうだが、わたしにはほとんど透明のように見えた。昔から1日に7回色が変わるとも言われている。
 お湯は湯船の底から湧いているのだそうだ。
【 滝 の 湯 】
 大湯へ降りていく階段の途中にある「滝の湯」。この時間帯は女性専用だったので、わたしも入浴した。
 こちらはやや熱めだが、適温。
 泉質は含硫黄・ナトリウム・カルシウム・塩化物泉で、滝の湯源泉を使用し、源泉温度は54.8度だ。
【 疝 気 の 湯 】
 疝気の湯は、女性にとってもっとも混浴しにくい露天風呂だ。
 なにしろ囲いがない。川に面したところに半月状の浴槽が剥きだしでポンとあって、脱衣所もなにもないのだ。
 わたしは入るのを諦めて、浸かっていたお兄さんに写真を撮る許可を求めた。快く承知してくれたお兄さん、「このままでいいですか?」と訊いてくる。
 わたしは、「はい、隠していただければ」と答えてカメラを構えた。
 だが、お兄さんが隠したのは顔だった。
 違う違う、隠してほしかったのは顔じゃなくって、別のほう・・・。
 あら、撮っちゃった。
 「別の箇所」を隠してもう一枚・・・とはさすがに言いづらかったので、わたしはお礼を述べて疝気の湯から立ち去った。
 ここがどれだけ開けっぴろげかというと、こんな感じ。川っぺりを普通に人が歩いている中で裸になるというのは、とても勇気がいるもんである。
 バスタオル巻きでもOKというのなら、もちろん誰でも入れる。しかし、それではあまりにも風情がなさすぎってもんだ。まるで「いい旅・夢気分」の女優みたいで、秘湯の雰囲気がぶちこわしである。
 しかし、この疝気の湯、実は婦人病に効能があるという。こんな開放的な混浴露天で、どれほどの女性がその恩恵に与れるというのだろうか。
 その点、男性はいいよね。
 こうやって川の中に座りこんで涼むことだってできるんだから。
 この人たち、何時間でもここにこうしていられるんだろうな。羨ましい。
【 真 湯 】
 ここも「滝の湯」と似たような造りの混浴。うっすらと白濁したようなお湯で、やはり熱め。
 人がいたので撮影できませんでした。
【 女 (目) の 湯 】
 おんなの湯と書いて、「めの湯」と読ませる。わざわざ括弧書きするくらいなら、最初から「目の湯」にすればいいのに。と思うのはわたしだけだろうか。
 真湯の真正面、川を渡った反対側にあり、よしずで囲われている。
 わたしは真の湯に入ったあと着替えず、バスタオル巻きのままでこの細くて心もとない橋を渡った。
 うっすらと濁った「女(目)の湯」のお湯。ホウ酸が多く含まれており、目によいとされる。
 もちろん混浴で、脱衣所は男女共通だ。 
 露天風呂中もっともぬるくて、たいへん心地よい。
 わたしが夫と入ったときは他に誰もいなかったが、あとから男性が入ってきた。別に遠慮したわけではないものの、なんとなくゆっくりできない雰囲気だ。
 男性なら川に入って涼んだりできるし、腰にタオルを巻いたまま風呂から風呂へと移動することもできる。
 女性にはどうにも不公平な夏油温泉。でも、まだ行ってみたい気がする。
 なお、元湯と山荘には宿泊客のみ利用できる内湯がある。泊まりで内湯も堪能するとよいかもしれない。

今回入った温泉
 夏油温泉
  

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