「日本秘湯を守る会」会員の宿とは聞いていたが、ここまで秘境にあるとは思わなかった。
三国峠にある貝掛温泉である。
実は、ここにはちょっとした因縁があった。かつて苗場に遊びに来たとき、友人たちと温泉に入ろうと貝掛温泉のすぐ近くまでやってきて、電話を入れた。
しかし、すでに日帰り入浴時間の2時を過ぎているということで、断られたのである。その時の悔しかった気持ちは未だに忘れられない。
以来、行きたいと思いながらもなかなか機会がなく、訪れることができなかった。
湯沢フィールド音楽祭で「加山キャプテンコーストスキー場」に滞在した2日目のこの日、思い立って貝掛温泉を訪れることにした。 |
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三国街道を苗場方面に登り、「かぐら・みつまた田代スキー場」を通り過ぎて間もなく「貝掛温泉」の看板が現れた。
案内に従って右に折れ、急な下り坂を下る。数年前はここまで来て引き返したのだった。
山に沿った細い道を少し走る。しかし、旅館はいっこうに姿を現さない。
やがて橋にさしかかった。
これが非常に狭い橋で、ハマーで幅いっぱい。
もうギリギリ。
左右に数センチぶれるだけで柵にぶつかってしまうほどの狭さだった。
普通の乗用車なら苦もなく通れるはずだ。
だが、ハマーの尋常でない大きさでは、何度も切り返しをし、橋に対して真っ直ぐになるよう態勢を整えてからでないと突入できなかった。
おまけに橋に入ったものの両側の柵が低いため、背の高い運転席からは脇がまったく見えない。
そのため、同行していたアズマさんが降りて左右を確認しながら誘導してくれた。 |
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橋のまわりはこの通りの絶景。足元に流れるのは清津川だ。 |
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橋を渡って間もなく、貝掛温泉館に到着した。
時刻は2時ちょうど。
アズマさんが一足先に車から降り、旅館の玄関に駆けこんでくれた。
わたしが行くと、着物姿の仲居さんが「せっかく来てくださったので特別に・・・」と言っているのが聞こえた。どうやら2時を1分ほど過ぎていたようだ。
仲居さんも番頭さんと思われるはっぴ姿のおじさんもにこやかで、感じがよい。
電話で断られた過去があるため高ビーな旅館かと思っていたが、意外とそうではなかった。 |
館内は、思わずほっこりさせられるレトロな雰囲気に満ちていた。
これまでも鄙びた昭和レトロな宿をたくさん訪れてきたが、ここはダントツにきれいな印象だ。鄙びているというより、非常に高級感がある。 |
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愛嬌たっぷりなアナクロ電話機。 |
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籠もいい感じの脱衣所。
バッグなどは入らない小さな貴重品入れがあるだけなので、高級ブランドバッグは持ちこまないか、フロントで預かってもらった方がよさそうだ。 |
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内湯は2つの浴槽に分かれている。
ひとつは源泉そのままの「ぬる湯」。もうひとつは加温された「あつ湯」である。
わたしは熱い湯が苦手なので、ぬる湯にずっと浸かっていた。湯の中を細かい気泡が乱舞し、次々と肌に付着してくる。
じっとしていると、体がアワアワになった。
匂いは、わずかに硫化水素臭。無色透明で強烈な特徴はないが、ほんのりと優しいお湯だ。 |
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浴槽に向かって左側が加熱された熱いお湯だ。
加熱したため泡付きはない。 |
露天風呂に出てみる。
女湯の露天は岩に囲まれ、ちょっと閉鎖的な雰囲気だ。男湯はこちらの公式サイトにある通り、たいへん開放的で羨ましい限り。 |
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お湯はちょっと熱め。わたしとしてはのんびりできない温度だった。あるいは半循環かもしれない。
加熱されているため、こちらでも泡の付着はなかった。
男湯の露天風呂は源泉掛け流しだそうである。
わたしの好みとしては、やはり内湯のぬる湯が最高だ。ちょっとぬるめのお湯に時間をかけて浸かっていると、額にじんわりと汗が浮いてくる。
体に付着する泡とたわむれながら過ごす時間はまさに至福のひとときだった。 |
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内湯にある飲泉所。35度くらいのぬる湯をコップに入れて飲んでみると、薄い塩味を感じた。
ちなみにこの貝掛温泉、開湯は約700年前の鎌倉時代と言われている。巡礼中の白雲禅師が発見し、戦国時代には上杉謙信が傷ついた将兵を癒した隠し湯であったという。
江戸時代からは「目の温泉」として知られるようになり、多くの湯治客で賑わったとか。湯が目薬としても売られていたこともあったそうである。 |