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夕暮れが迫る時刻に辿り着いた湯の峰温泉。目的は有名な「つぼ湯」に入ることだったが、渡された番号札で入れるのは2時間も先のこと。
そこで、まず公衆浴場の「くすり湯」に入ることにした。「つぼ湯」にしても「くすり湯」にしても、入るにはまず受付の券売機でチケットを買う必要がある。「一般湯」、「くすり湯」、「つぼ湯」に分けられたボタンがあるので、入りたい所のボタンを押す。「一般湯」と「くすり湯」とはどこが違うかというと、「くすり湯」の方は薄めず冷ました源泉をそのまま投入しているらしい。
また、「つぼ湯」を購入すると、同じチケットで「くすり湯」にも入ることができる。最初、そのことを知らずに「くすり湯」を買ったわたし、「つぼ湯」にも入ることを告げたらお金を返してくれた。
浴槽は10人も入れば一杯になりそうなのが一つだけ。白濁しており、最初はかなり熱く感じる。
自然保護のため石鹸、シャンプーの類は禁じられているため、ひたすら浸かるだけの温泉である。
わたしたちが来たとき、ちょうど団体さんが帰る直前だったのでごった返していた。その波が引いた後は静寂が訪れ、じっくりと「くすり湯」を堪能することができた。
天井は高く、湯気が登っていくようになっている。なかなか鄙びていて、マニア心をくすぐる温泉である。 |
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この湯の峰温泉は、奥熊野本宮温泉郷(湯の峰、渡瀬、川湯)のひとつ。約1800年も昔、成務天皇(在位121年〜190年)の代に大阿刀尼によって発見されたとされる、日本最古といわれる温泉地である。
温泉名は、湯の花でできた薬師如来の胸から温泉が湧いていたことに由来し、「湯の胸」転じて「湯の峰」となったそうだ。
大きなホテルなどは一軒も建っておらず、古い旅館や民宿が建ち並ぶ小さな温泉場だ。
熊野詣での「湯垢離場(ゆごりば)」として栄え、河原には日に7回色が変わるという共同浴場「つぼ湯」がある。 |
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さて、その「つぼ湯」の順番が来るまでの間、周りをウロウロ。
こちらが「つぼ湯」の正面玄関。ドアの左側に靴があるが、これが人が入っているという証し。もらった番号札をドアの左側のフックに掛けて入る。そうすると、あとの人は現在何番が入浴中だとわかる仕組みなのである。
大ざっぱな創りなので、壁板の隙間から人が動いているのが見える。昼間なら動いているのがわかる程度だが、夜ともなるとはっきり、裸の人が浴衣を着ようとしている様子が垣間見える。まあ、細い隙間なので男女の違いなどはわからないし、通行人が多いからもっと覗こうなんて不埒者もいないだろうけど。 |
で、こちらが裏側。「小栗判官湯治場」と書かれている。小栗判官とは、浄瑠璃、歌舞伎、人形芝居などでヒロイン・照手姫とともに親しまれてきた伝説上の人物である。
史実の小栗判官満重は応永300(1423)年生まれ。室町幕府の時代である。常陸国小栗邑(現在の茨城県協和町)の領主だったが、戦で破れ、落城に伴って自害した。ちなみに判官とは朝廷からもらう官職名で、「ほうがん」と読む。あの義経も判官だった。
伝説上では落城後、満重の息子・助重が10人の家来を連れて三河国に向けて落ち延びていくが、その途上、相模の国で毒殺されてしまう。
東国一の美女と謳われた照手姫の元に強引に婿入りしたため、照手姫の父・横山将監に憎まれたためだ。一説には、照手姫は遊女、芸妓だという説もある。
地獄へ落ちた助重だが、閻魔大王の計らいによって餓鬼の姿のまま地上に戻される。これを発見した照手姫は土車に助重を乗せ、熊野を目指して苦難の旅を続ける。途中、幾多の善男善女の助けを受け、また照手姫の献身的な努力によって助重は熊野に辿り着く。
助重は100日のあいだ湯の峰温泉の湯に浸かり続け、元の姿に戻ることができた。そして見事、小栗家の再興を果たしたのだった。
この物語は、熊野信仰や時宗聖(遊行僧)の説く仏教思想の影響で、庶民の中に根強く生き残っていったものらしい。
【関連リンク】熊野本宮観光協会「小栗判官伝説」 |
1時間半待って、ようやく順番が来た。1回の入浴につき30分の制限時間が設けられているが、グループごとに入浴できる。そのため、夫婦やカップルで入る人たちが多い。
わたしたちの前のグループも、浴衣を着たカップルだった。
この「つぼ湯」、自然石をくりぬいた風趣満点の湯船である。川底に設えてあるため、非常に切り立った室内に驚く。
「世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道」の登録地域にある温泉であるため、このつぼ湯は世界遺産に登録されている公衆浴場として世界唯一である。 |
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1日に7回色が変わるという「つぼ湯」のお湯。このときは青みがかった白濁湯だった。
大の大人が2人も入れば一杯、我慢すれば3人、無理すれば4人入れるかなというくらい小さな浴槽だ。奥の方は岩が覆い被さるように迫り上がっている。
浸かっていると、岩の隙間や底からお湯が湧出しているのがわかる。それもけっこう熱い温度だ。 |
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で、人が浸かるとこんな感じ。成人男性が3人も入ったら大変なことになりそう。
浴槽のへり(石を並べてある縁の部分)の幅が長く、そのままストンとお湯の中に落ちるような感じで入りにくい。
ここはテレビで紹介されたこともあり、現在大変な人気。30分しか入れないのが残念だ。 |
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