小林一茶もお気に入りだったという湯田中温泉「よろづや」の別館、「湯楽庵」に泊まった。
「よろづや」は江戸時代の寛政年間に創業したといわれる開業約200年の大老舗。松代藩領だったことから、殿様が1799年(寛政11)から1862年(文久2)の6回にわたり「御境廻り」に訪れた記録が残っているという。
ここの名物は、登録有形文化財に指定されている伽藍建築の「桃山風呂」だ。 |
まず脱衣場からして歴史を感じさせる造りである。
欄干は越後の彫刻師・相崎武吉によるキジの透かし彫りで飾られている。寄木細工の脱衣床板も当時のままだという。
扉の上に掲げられている額は、佐久間象山の「洒心」(さいしん)というもの。
象山はこの松代藩に生まれた下級武士で、のちに兵学者、思想家、洋学の第一人者として知られるようになる。
嘉永6年(1853年)、アメリカ海軍のペリーが来航して以降は開国派の論客となった。
香取慎吾主演のNHK大河ドラマ「新選組!」をご覧になった方は、石坂浩二さんが演じた最後に暗殺されてしまう学者役と言えばおわかりになるだろう。
ここまで凄いと、なんだかお風呂というより格式の高いお寺のような雰囲気だ。もうお湯なんてどうでもよくなってしまう。
・・・とはいえ、温泉好きとしては一応お湯のレポをしておかねばならない。 |
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桃山風呂は、桃山調の書院造りに天平や鎌倉様式の紅梁、桝組を交えた伽藍建築の浴場だ。
1951年から1953年(昭和26〜28)にかけて造られ、木材には杉丸太、ケヤキが使用されている。
天井は浴場にありがちな吹き抜けではなく、一枚一枚、枠の中に板をはめこんだ手の込んだ造り。旧家や寺院の天井のようだった。
浴槽は37平方メートルと、たいへん広い。 |
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湯船に浸かって脱衣所方向を見る。古びてはいるが、威風堂々とした造りで心底感服。
お湯はご覧の通り無色透明、匂いもほとんどないサラッとしたもの。
岩を組んだ湧出口近くでは、硫化水素臭がぷーんと漂っていた。ひしゃくが置かれており、湯をすくって飲んでみると、ほのかな塩分と卵味を感じた。
湯温が93.6度と非常に高いので、地下水を25%まぜているという。が、それでもここの桃山風呂が一番お湯が濃いように感じた。 |
翌日、男女入れ替わった「東雲風呂」にも入ったが、硫化水素臭や卵味、またツルツルした肌触りといったものは特に感じられなかった。
なにが凄いって、ここのお湯は驚くほどよく温まる。これまで様々なタイプの温泉に浸かってきたが、野沢温泉に並んで最もよく温まる温泉ナンバーワンに推したい。
それくらいポカポカになるのだ。源泉は「畦上噴泉」という。あとで入った「大湯」や他の共同湯はボーリングされた源泉である。 |
桃山風呂の外にある大野天風呂。
以前、HPでここの画像を見たときは池かと思ったが、れっきとした温泉だった。
一般のデジタルカメラでは全景を映し出せないのが残念だが、実際はもっと広々としている。とはいえ、HPや雑誌などで見る大野天風呂は広角に映りすぎ。思ったより広くはないが、わたしが撮った画像よりは広いといったところだ。
屋根は古寺のおもむきを湛えており、なんだかお賽銭を投げたくなってしまった。 |
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こちらは「東雲風呂」で、近年造られた近代的な浴室である。小さいながらも露天風呂を備えジャグジーもあるが、雰囲気は桃山風呂には遠くおよばない。
桃山風呂は夜9半まで女性専用。22時から男性専用に切り替わり、昼時の清掃時間を経て、午後2時から再び女性専用となる。つまり、金曜日に到着して入れ替わりとなるまでの数時間しか、入ることができないというわけである。
この宿は日帰り入浴も受け入れている。かつては日帰り入浴だと女性は桃山風呂に入れないこともあったそう。その後 入れ替わり、今度は日帰りだと男性が桃山風呂に入れないようになった。
女性客を大事にする姿勢は評価したい。
現在は日、火、木曜限定で日帰りプランを設定しており、時間帯を選べば男女ともに桃山風呂に入ることができるようになった。(要予約) |