なんと表現したらよいのか、レトロと呼べるほど格調高いわけでもなく、あまりに庶民的。鄙びていると表現するには人気がありすぎ。
ひたすらコテコテの超ローカルムードが漂うヘルスセンターで、年齢層が高いのも特徴的である。入浴客の中ではわたしがもっとも若いのでは(こんなトシでも・・・)と思うくらい、まわりはお爺ちゃん、お婆ちゃん、おばちゃんでいっぱい。でも、みなパワーがあり、とっても楽しそうに温泉ライフを満喫しているのだ。 |
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「オートレストラン長島」の駐車場にトレーラーを停め、一人でやってきた「ゴールデンランド木曽岬」。12月30日に電話をしたところ誰も出なかったので心配していたが、明けて2日に電話をしたら、開いているという。そこで単身訪れたのだが、午前9時半とちょっと早かった。
駐車場に車を入れてエンジンを切り、中で待っていようとそのままでいると、前の車から降りたお爺さんがこちらに近づいてきた。さっきから好奇心いっぱいの様子でこっちを見ていたので嫌な予感がしていたのだが、どんどん近づいてきて、窓の外に立った。 |
無視するわけにもいかず、窓を開けてお爺さんを見る。
「これ何という車?」
前置き抜きで、いきなり尋ねてきた。
「ハマーというアメリカの車です」
「ハマー?」
お爺さんは何度か聞き直し、しばらくしてまた「なんだったっけ?」と聞いてきた。
そうこうしているうちに、車が続々と到着してくる。おじさんおばさんがグループで来て、たくさんのポリタンクを玄関前に並べ始める。行列ができだしたので、わたしも車から降りて並ぶ。玄関のガラスには「温泉の持ち帰りは一人一容器、20リットルまで」という張り紙がある。わたしの後ろに、さっきのお爺さんが来た。彼の奥さんも一緒だ。
「東京から来た」などと話をしたりする中で、「お湯を汲んで飲むんですか?」と質問すると、「これでお茶やコーヒーを入れて飲むとおいしい」ということだった。とっても親切なご夫婦で、これで温泉を汲みなさいと、4リットル入りの大きなペットボトルを分けてくれた。 |
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さて、いよいよ10時となり、開店。さながらバーゲンのような勢いで、皆さんなだれをうって中に駆け込む。どうやら休憩所の場所取りをする気らしい。その休憩所、半端な広さじゃない。まるで体育館の避難所のような雰囲気だが、ちゃんと緞帳付きの舞台まである。以前は演芸が上演されていたということで、現在は月に1度、演歌歌手がくるそうだ。
わたしが脱衣所に飛び込んだ着順は二位。写真を撮るため急いだわけなのだが、もうもうたる湯気のため全景がクリアに撮れなかった。 |
とにかく広い浴室である。そして、湯温が非常に高い。最初足だけ浸けていたが、その足がビリビリと痺れるほど。
この広い浴槽、浅さが三段階になっている。一番浅い位置で座って慣らした後、次の水位へ、そして一番深い位置へと順繰りに浸かれるようになっている。顔見知りになった人は、「足だけ入れてるとビリビリして熱く感じるけど、肩まで入っちゃうと意外と平気なのよ。不思議なの、ここのお湯は」と言い切っていた。
確かに首まで浸かると、ビリビリ感が薄れて心地よく浸かれる。が、そうそう長くは入っていられない。やっぱり熱い。 |
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なにしろ源泉温度62度のお湯だ。言い忘れたが、お湯はもちろん掛け流し。薄い茶褐色で、ほとんど透明。淡いモール臭が漂い、肌触りはツルツル。茶色い湯の花がふわりふわりと漂っている。
で、この顔見知りになった人、わたしに「東京から来たんだって?」と言うので、『おお〜知られてるよ〜』と思わず笑ってしまった。どうやら、さっきのお婆さん(後ろに並んでたお爺さんの奥さん)がしゃべったらしい。きっとお仲間に「東京の人が来てるよ」って話したんだろうな。帰る頃には、お婆さんの知り合いで「東京から来たお姉さん」を知らない者はない状態になってました。 |
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ところで、このゴールデンランドには面白い仕掛けがいっぱい。浴室の広さに驚き、次にこの天守閣に驚愕する。
男女の仕切りの壁に建てられているこの天守閣、てっぺんにシャチホコらしき姿も見える。ちゃんと漆喰で作られていて、なかなか立派なものだ。
やっぱりこれって、にゃごや城? |
唐突な場所に飲泉所もある。クセのない味のお湯で、とっても飲みやすい。お城の生け垣を模しているのだろうか、浴室の至るところにこうした石組みのデザインが見られた。
別に容器で汲むための蛇口も設けてあり、いくつものポリタンクにお湯を汲んでいく姿も見られた。
次にびっくりしたのが、下のジャリ風呂。ジャリの中から高温のお湯が浸み出しており、足の裏がヤケドしそうなほど熱い。木の枕に頭を置いて横たわると、背中がこれまた熱い。あとでおばちゃんに「ヤケドしたんじゃない?」と言われるほど真っ赤になっていた。 |
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穴を掘ると熱いお湯が溜まってしまうので、なるべく掘らないようにして横たわる。お腹の上にジャリを載せていると、なかなかいい気持ち。時間がなかったのであまりゆっくりできなかったが、ここで爆睡するのも気持ちよさそうだ。開店1時間後には、横たわる場所もないほどたくさんのおばちゃんたちで埋め尽くされていた。
このジャリ風呂でゴロゴロするのも最高だが、浴室の床で寝そべるのもなかなか極楽である。「床で?」と意外に思うかもしれないが、そう、ここではおばちゃんたちがタイルの床の上で堂々とトドっている。 |
ジャリ風呂の木の枕を使い、数人がおしゃべりしながら寝っころがっているのだ。場所は大浴槽のすぐ脇、掛け捨てられたお湯が流れる床の上だ。「トドる」とは、おばちゃんがゴロ寝している姿を岩場のトドになぞらえ、温泉で横たわることを称する温泉用語(?)である。
これまでもいろんな温泉でよく見てきた光景だが、わたしくらいの年齢ではまだ恥ずかしくて堂々とできるものじゃない。だが、この温泉をHPで紹介した「ごくらく温泉」のはなさんが「ここでトドると極楽〜」と言っていたので、どうしてもやってみたかったのだ。
そこで、まだ誰もトドっていない時間帯に、そっと身を横たえてみた。浴槽から流れでる熱いお湯が、体の下をサラサラと流れていく。これがまた、たまらない快感。仰向けもよいが、うつ伏せも結構気持ちよい。
ただし、ここのトドスペースはごく限られている。2度目にトドろうと思ったら、地元のおばちゃんたちに独占されていた。そこで、一番浴槽に近い床に寝ているおばちゃんの足下に横たわり、お流れで気持ちよくトドらせていただいた。
先ほど4リットルのペットボトルを分けてくれたお婆ちゃんも、近くでトドっている。わたしは大浴槽に出たり入ったり、ジャリ風呂に行ったり戻ったり、トドったりと、かなりウロウロしていたが、お婆ちゃんはなにくれと世話を焼いてくれる。
「石鹸持ってきた?」と聞くので、「忘れた」と答えると、石鹸ばかりかナイロンタオルまで貸してくれた。使っていいのかな?と思ったが、人情が嬉しくて、それで体を洗わせていただいた。お婆ちゃん、本当にどうもありがとう。 |
脱衣所に上がると、「石鹸もドライヤーもないじゃない!」と不満げな女性がいた。テレビで紹介していたので、愛知県から来たという。確かに備品はゼロ、脱衣所には化粧台もなく、設備は期待できない。ロッカーもコインが戻ってこないタイプのもの。入浴料は実質700円だと思った方がいいだろう。
でも、なんにもなくても、湯量豊富で掛け流し、ジャリ風呂とトドれる床があって、人情があって、余分なものは一切必要ないって感じがとてもいい。豪華と設備が取り柄の循環塩素温泉とは、根本的に本質が違う。 |
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お湯が売りの直球勝負という感じで、ちょっとマニア向きかも。新しくて綺麗な所が好きな人にはお勧めしません。
お爺ちゃんにもらった焼酎ペットボトルと持参したへルシア300mlの空き瓶に温泉を詰めて、大満足で帰宅。気取りのない、この超濃い雰囲気が癖になりそうだ。
帰り際、ソファで一服していたおばちゃんたちに「お先に失礼します」と挨拶したら、「またおいで〜」と言ってくれた。そのあと「遠いけど」と小さくつぶやく声があったが、ぜひぜひまた来てみたい、お気に入りナンバーワンの温泉である。 |
| ↑家に持ち帰り、冷蔵庫に保管してある木曽岬温泉のお湯。毎日これでコーヒーを入れて飲み、2週間ほどでなくなった。またペットボトル抱えて行きたい。 |