まだまだ今日のうちに行っておきたい城はたくさんあったが、そろそろ夕方。早めにホテルに着いておきたかった。夕食の時間が何時なのかも聞いていなかったし、チェックインが遅れると夕食を作ってもらえないかもしれない、なんて不安が頭をよぎる。まさかそんなことはあり得ないだろうが、プライベートシャトーなので用心するに越したことはないと思ったのである。
城と城との距離は思ったよりもずっと離れていて、閉館時間のこともあって今日はもうこれ以上行かれないと判断。ガイドブックなどに「城の見学は1日2つが限界」というようなことが書いてあったのを、まさしく当たっているわと思い出す。
わたしはトゥールから約6キロの所にあるChateau de l'Aubriere(シャトー・ドゥ・ローブリエール)に向かうことにし、あらかじめパソコン・カーナビに記憶させておいたホテルを目的地に定めた。
目的地に着いてから肝心のシャトーが見つからずウロウロしてしまったが、ほどなく小高い丘の上に建つシャトーに辿り着くことができた。 |
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シャトー・ドゥ・ローブリエールは「シャトー&ホテル・ド・フランス」日本代理店のサイトで予約をした、プライベート・シャトーである。
サイトに記載されていた説明によると、19世紀にコニャックの銘柄でも有名なマルテル家が所有していたという館だそうだ。
シャトーというには少々小ぶりな感じだし、王侯貴族が贅を尽くして建てたゴシック様式だのルネッサンス様式だのとはかなり異なるが、なかなか美しい。
建物の左側の草地に2台の車が停まっていたので、そこにプジョー君を駐車させる。
一度に2つのスーツケースを持ち出すのは無理なので、1コだけ持ってシャトーの玄関を登る。
玄関まわりには子どもの遊具が放置されており、なんだか家庭的な雰囲気だ。
それでも玄関を開けて中に入るときは、ちょっとした勇気を必要とした。「ボンジュール。予約しているのですが」と挨拶して、フロントのマダムに印刷してきたバウチャーを見せる。
どうやらこの人がオーナーマダムらしい。ブロンドでちょっと派手めな印象の、50代くらいの女性であった。
マダムは英語が堪能で、会話はすべて英語でなされた。彼女が言うには、「いいお部屋に替えておいてあげたわ。今日はウィークデイだから他に宿泊客がいないから」なんだそうだ。きょとんするるわたしに、「特別サービスよ」とウィンクする。
さらにマダム、「プールがあるからどうぞ」と言う。わたしが「水着を持ってきていない」と言うと、「今日は誰もいないから大丈夫よ」と両手を広げた。
な、なにが大丈夫なんだ? |
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次にマダムが自ら部屋へ案内してくれた。わたしのどでかいスーツケースをひょいと持ち、すっすっと階段を上がっていく。
ひょえーすごい腕力。さすがフランスの女性は逞しいんである。 |
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これがわたしたちのお部屋。各部屋はロワール河沿いの城にちなんだ名前がつけられており、ここは「AZAY LE RIDEAU」。
ホテルの公式サイトによれば、25平方メートル、140ユーロの部屋だ。
わたしが予約しておいた部屋は一番安い95ユーロの「RONSARD」という屋根裏のような部屋だった。(公式サイトの「Bedroom」で違いを確認してみてください)
わーい、なんというラッキー。平日だったお陰でこんな広い部屋にしてもらえたよ。
部屋自体は古く、歩くと床板がミシミシ音をたてる。タンスも古く、ソファのスプリングは異常にゴツゴツしている。調度品自体に高級感はないが、まあ維持費にお金がかかるからしょうがないだろう。シャトーホテルに泊まれただけでも、わたしたちは満足だった。第一、どれも真新しかったら古城ホテルの雰囲気が台無しだもんね。 |
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| バスルームにはもちろんバスタブがあり、こちらは新しく改修されているようだ。洗面台や便座が花びらの形をしていて、とてもおしゃれな感じ。 |
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車から残りの荷物を持ってきて、ちょっと一休み。冷蔵庫にあったクローネン・ビールを開けて、ぐびっと飲み干す。 |
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さて、10分ほど休憩してから、わたしたちは部屋を後にした。夕飯まで1時間ほどあるので、それまでプールで遊ぶために替えの下着を用意していた。
階下に降りると、旅行客風の男性が一人、フロントに来ていた。親しげな様子でマダムと英語で話している。
マダムは「客は一組しかいない」というようなことを言っており、この男性、泊まるのかなと思いながら、わたしたちは庭に出た。
あとで1階のロビーからドアの開いているリビングなどを覗いてみたが、完全にオーナー一家の生活スペースと化していた。マダムは子どもが5人いると言ってたが、孫もいるらしい。
シャトーホテルというより、なんだか民宿みたいだ。そう、ここはシャトー民宿と呼ぶべき宿泊施設なのであった。
←シャトーの裏手に広がる景色も緑が濃く、美しい眺め。 |
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広い庭を横切って奥に進み、プールに着く。思っていたよりずっと綺麗で、手入れがされていたことに驚く。娘に「きっと藻が生えていてヌルヌルしているよ。水を飲まないようにね」なんて話していたからである。ところがところがとんでもない。水は透明できれいだし、カーブした一角は温水が吹き出してジャグジーのようになっていた。
娘は大喜び。さっそく下着姿になってプールに入る。 |
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わたしはさすがにそこまでできず、パラソルを差して椅子の下で見物を決めこんだ。
周囲の木々からは野鳥のさえずりが響き渡り、のどかで平和な雰囲気。ああ、部屋からビールを持ってくれば良かった。
こんなシャトーで暮らせたら、どんなにか素晴らしいんだろう。いや、毎日だったら退屈かな。近くにはデパートもコンビニも、TSUTAYAもないぞ。
最初はビート板に掴まってバチャバチャする程度だった娘にクロールを指導。
さらには「向こうから走ってきて飛びこんでごらん」と言うと、「えー、恐くてできないよ、そんなこと」なんて言っていた娘が、一度やるとヤミツキになって、何度も何度も繰り返し走り飛びこみをしていた。
そんなとき、先ほどの男性客がプールに現れた。おおっ、マダムは「男性もいないし大丈夫よ」なんて言ってたのに、男性が来ちゃったよ。娘と一緒に下着姿で泳がなくってよかった。
男性はただちょっと見にきただけらしく、プールに手を入れて「おおー」とか言っていた。
わたしが「冷たい」と言うと、「ぜんぜん大丈夫」と笑って木立の中に消えていった。
さて、そろそろ夕食の時間が近づいていた。娘は非常に楽しかったらしく、1時間ではとても足りなかったようだ。もっと遊びたい、明日の朝も泳ぎたいと訴えた。わたしは「そんなに泳ぎたいなら豊島園のプールに行きなさい!」と思わず口走っていた。
でも、最終的に「また来年来ようね」ということで決着がついたのだった。 |
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ディナー |
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夜8時。素敵なダイニングでマダムの手作りディナーをいただく。これは予約制で、大人40ユーロ。若い男性がウェイターをしていた。
まず最初に、ゆでた海老が出される。さっぱりとした味付けで、海老が大好きなわたしはパクパク、ほとんど平らげた。しかし、すごい量だ。
次のメインディッシュは、ビーフの煮込みと麦のつけ合わせ。おいしいが、量が多いので途中で飽きる。全部食べきれなかった。
次に各種チーズが出され、何種類か選べたのだが、もうお腹いっぱいで1種類だけ、一番癖のなさそうなのをチョイスした。他はカビ系のチーズが多かった。
次にデザート。お菓子の上にチョコレートソースを掛けたもの。
全体的に、フランス料理というよりビストロの家庭料理という感じだ。もうちょっと凝ったフランス料理を期待していたが、手料理だからこんなものだろう。 |
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体格が違うから当然だが、そもそもフランス人と日本人とでは食べる量が違う。パリのレストランでも食べきれないほどの量が出された。ワインやビールを飲みながらの食事なので、どうしてもお腹いっぱいになりやすい。
最後にはコーヒーと紅茶が出されたが、これは別料金。器がたいへん素敵だった。
←マダムがシャッターを押してくれて記念撮影。 |
朝ご飯 |
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翌17日はいよいよ帰国する日だ。古城めぐりのためには最低もう1日必要で、せめてもう一泊できたらと思う。
だが、わたしが予約しているフライト・チケットは日時の変更が利かないタイプ。残念ながら、ステイを伸ばすことはできなかった。
これでまた、来年フランスに来る口実ができた。娘とまた同じ5月にここに泊まりに来ようねと話し合ったのだった。 |
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朝日の差し込むダイニングで朝食をいただく。サクサクのクロワッサンがとても美味しかった。
他にハムなどあったが、やはりスクランブルエッグや炒めたベーコンなど、暖かい料理もあったら良かった。
朝食も別料金で、一人10ユーロ。 |
チェックアウトの時、「来年また来たい」と言ったらマダムに喜んでもらえたが、肝心の冷蔵庫の精算を忘れてきてしまった。だって、マダムがなにも聞いてこないんだもの。
おまけに目覚まし時計として使っていた携帯電話を枕の下に忘れてくるという2重の失態をやらかした。
帰国後、「シャトー&ホテル・ド・フランス」にメールして携帯を送ってくれるよう、またクレジットカードの番号を報せて冷蔵庫の精算と送料代を請求してくれるよう、依頼をした。2〜3週間ほどして、丁寧に梱包された携帯電話に請求金額を記した手紙が同封されて届いた。
仲介してくれた「シャトー&ホテル・ド・フランス」と、シャトー・ドゥ・ローブリエールのマダムに感謝したい。
さて、車に荷物を積み込んで、ホテルを後にしたわたしたち。飛行機の時間は午後8時。それまで果たしていくつの城を回れるだろうか。 |
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