4日目 パリ発、レンタカーの旅1
 
  レンタカーを借りる
 パリ滞在3日目。今日はレンタカーを借りてパリを離れ、サン・ドニに立ち寄りモン・サン・ミッシェルへ、そして明日はロワール地方に向かう予定となっている。
 車を借りるのは、ハーツのカルーセル・ルーブル営業所というところ。ルーブル美術館の地下にある「カルーセル・ルーブル」という名のショッピング・モールの一角にあり、前日に下見もして準備はバッチリ。
 と思っていたら、その下見が逆に裏目に出た。
 
 予約時間の朝8時、リヴォリ通りに面したカルーセル・ルーブルへの入口を素通りし、地下駐車場へ降りる階段の方へと直接行ってしまったのだ。
 下見の時、「ここのドアが閉まっているときはあっちの階段を利用して」と言うようなことが書かれた地図を見てしまったため、ハナから閉まっていると思いこんでいたのである。
 結論を先に書くと、駐車場のドアは時間外のため開かず、逆にカルーセル・ルーブルの入口は開いていた。エスカレータが止まっていて薄暗かったので、てっきり閉まっていると思いこんでしまったのだ。
 後から知ったのだが、カルーセル凱旋門左右にもショッピングモールへ降りる階段があるそう。
 なんだか思い切り慌てて、疲れて、くたびれもうけみたいな行動をしてしまった。
 
 降り口がわからないので、そばにいた警察官男女二人にも聞いたが、よく知らないようだった。
 この日、リヴォリ通りは早くから通行止めとされ、ジャンヌ・ダルク像の前には花束が用意されていた。どうやら式典の準備らしい。
 わたしが話しかけた警官はその交通整理要員だったのだ。
 一体なんの記念日だろう。ジャンヌ・ダルクの誕生日か、命日、あるいはオルレアン解放の日か。
 あとで調べたら、オルレアン解放は5月8日だった。オルレアンの街ではその日、盛大なお祭りが行われるんだとか。
 でも、今日は5月14日。ジャンヌ命日は5月30日だ。うーん、わからん。もしかすると6日遅れの解放記念日だろうか。
 
 なんとか地下のハーツまで辿り着き、お店の中へ。予約バウチャーとあらかじめ作成しておいたレンタル書類を見せ、手続きに入る。
 JCBカード、日本の免許証、国際免許証、パスポートなどを見せ、書類にサインなどをして、けっこう時間がかかる。
 やがて駐車場の地図を見せられ、「何番に車がある」とキーを渡されて、すべて完了。ということは、駐車場に職員など誰もいないってことだね。ガソリンタンクの蓋の開け方とか、聞きたかったのに。
 ハーツの営業所を出て階段を登ると、すぐに駐車場に出た。たくさん停まっている中からわたしたちの一台を探しだす。
 指示された番号がすぐに見つからないので手当たり次第、車のキーのロック解除ボタンを押してみる。そして、わたしたちの車を発見。シルバーのプジョーで、コンパクトタイプだ。
 驚いたことにドアはスライド式だった。しかもキーのボタンを押すと自動的に開閉するという、大変ハイテクなものだ。内部も真新しくて、レンタルカーというと「くたびれた車」というイメージがあったわたしの脳内を思いきり根底から洗い清めてくれたのであった。
 だが、ものが最新すぎて扱いのわからない部分も多少あった。シフトノブなどはこれまで見たことのないタイプ。あーでもないこーでもないとノブをひねくり回した結果、レバーを横にちょんと叩けば1速に入るということは理解できた。右にちょんと叩けばニュートラルに、右後ろに叩けばバック、という次第である。
 だが、次に大きな障壁にぶつかった。
 いくらアクセルを踏んでも車が前に進まないのである。
 ぶいーんとエンジンは回るのだが、車体がわずかに揺れるのみ。車止めでもあるのかと降りて探したり、営業所に戻ってやり方を聞いてこようかと大いに(なんと10分も)悩む。
 結局、踏み込みが足りないだけだった。
 ちょっとアクセルを踏んだだけでなめらかに走り出す日本車とは、エンジンの力が大きく違うらしい。日本車なら間違いなく飛び出して壁に激突するぞ、というくらいに踏み込まないと進まないのである。これにはたいそう衝撃を受けた。
 駐車場に係員がいて扱い方を説明してくれるわけではないので、どんな車でも転がせるという自信がないと、本当に大変である。 
 あとよく言われるのが、フランスは右側走行なので間違わないように、ということ。右左折のときうっかり反対車線に入り込まないよう、常に「右側、右側」と自分に言い聞かせていなくてはならない。
 過去ハワイ、グアムでレンタカーを借りたことはあったが、運転役はいつも夫だった。自分自身、外国で運転するのが初めてなら、右側通行もこれが初めて。
 わたしはそろりそろりとプジョーを走らせ、駐車場を出た。
 ハーツで渡されていた駐車券を出口の料金所で差しこんだら、無料で出られた。
 そのあと右側車線に出ようとしたら、待ちかまえていた女性係員に左側を走るよう誘導される。
 「???」
 どうしたことか、ここだけ車線が左右反対らしい。
 坂道を上り、地上に出た。
 ここはあらかじめ下見をしておいた、地下駐車場からの出口だ。
 リヴォリ通りに出るが、そこは一方通行なので歩いてきた道を戻ることはできない。実はスーツケースをホテルに預けたままなので、取りに戻らないといけないのだ。
 わたしは車を路肩に停め、ノートパソコンのセッティングにかかった。いよいよ日本で準備してきたパソコン・カーナビの出番である。
 GPSレシーバのコードを伸ばして屋根にはりつけ、地図ソフト「AutoRoute2006」を起動させる。あらかじめ設定しておいたホテルを目標地点に定め、車を進める。
 実は、フランス・ツーリズム旅行情報局というサイトの掲示板でレンタカーについて相談したら、何人かの経験者にパリからの乗り出しを反対された。
 フランス人の運転は非常に荒く、スピードをばんばん出すのでとても危険。また一方通行が多いので、道に迷うのは必定、といった意見だった。
 だが、「AutoRoute2006」はたいへんな優れものだった。GPS対応で、文字と音声でルートを正確に指示してくれ、もちろん一方通行の情報も入っているので、一昔前のカーナビみたいに一方通行でも右折禁止でも曲がれと指示してくるようなことはない。
 わたしは迷うことなくホテルに到着した。
 荷物を車に乗せ、今度は目的地をパリ郊外のサン・ドニに定め、再び出発したのだった。
 
フランス人の運転はいかに
 フランス人はやたらびゅんびゅん飛ばすとか、事前に耳に入ってくるのは「フランス人スピード狂」説ばかり。さすがにF1大国(?)フランス。「ふらつー」の掲示板でもパリ市街地の運転を反対されたし。
 そんなにひどいのか!? と身構えていたら、思ったよりひどくない。というのが感想。むしろ、スピード的にはわたしに合っているし、日本人より運転が上手い。さすが、ジャン・アレジの国だ。(?)
 マナーも大変よろしい。
 合流で譲るべき時にちゃんと譲っているし、ロータリーに入る前には一時停止して無謀に突っ込んでくる車もない。
 バス専用レーンを走るのは見事にバスだけ。いや、たまにバスの真後ろを走るトラックなどもいることはいるが、普通の乗用車はちゃんとルールを守っている。
 なにより、走行車線と追い越し車線の区別がしっかりできている点、歩行者優先のマナーが徹底している点には非常に感心した。
 歩行者用信号が赤でも車が来なければ、歩行者はとっとと車道を横切ってしまう。その辺はさすがに合理的なフランス人である。だが、そこへ車が来ても、ドライバーはけっしてクラクションを鳴らさない。パリにいた数日間、歩行者に対してクラクションを鳴らしているのを一度たりとも見たことがない。とにかく歩行者保護なのである。
 ただし、もたもたしている車、じゃまな所にいきなり停まったりした車には容赦なくクラクションを浴びせかける。
 パリでの運転は危ない、大変だ、という意見の元になっているのは、一方通行が非常に多いという点だ。確かに多いことは多いが、まあパソコン・カーナビがちゃんと指示してくれるから支障はない。
 レベル的には、東京の首都高速道路で運転ができる人なら、まず問題なく運転できるだろう。え、首都高なんて恐くてとても運転できないって? いや、それは例えであって、フランスのハイウェイは首都高ほど走りにくくないからご安心を。


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