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実は防犯のために催涙スプレーをバッグに忍ばせていたため、わたしは大して危機感は感じていなかった。相手がピストルでも持っていたらアウトだが、まさかそんな本格的な強盗なんていやしないだろう。(あくまでも強気)
ほぼ時刻表通りに、「VICK」と表示された列車が到着した。フランス国旗のカラーリングが施されたおしゃれな車体だ。
中から女性が一人降りてきて、なんだ大丈夫そうじゃないと、ひと安心。 |
車内は1階と2階の席に分かれていた。2階建ての列車というものに初めて乗るわたしたちは、迷わず2階席に直行した。
なるべく人が多い車両に乗りたかったが、わたしたちが登った2階席には、1人の男性が乗っているのみだった。わたしたちはあまり車内の奥に進まず、出入り口近くに座を占めた。
座席はビニール製で安っぽい感じ。ところどころ黒いマジックで落書きが書かれ、窓にもひっかいて書いた落書きが。
列車が走り出し、いくつかの駅に停まると、次第に乗りこんでくる人が増えてきた。わたしたちのすぐそばには挨拶のキスを交わす男女の通勤客なども座り、次第に緊張感が薄れていく。
列車はしばらく地下を走ったあと、やがて地上に出た。どうやらパリ郊外に抜けたらしい。すると、通勤客はひとり降り、またひとり降りていって、車内は再び閑散となってきた。だが、明るい地上を走っているので、不安感は少ない。
ミュゼ・ドルセー駅を出て30分ほどで、列車はヴェルサイユ・リヴ・ゴーシェ駅に到着した。 |
ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュ駅に到着 |
電車を降りて、改札に向かう。
ここで懸案だった娘の切符の件をどうにかしないといけない。
ここの改札、ミュゼ・ドルセー駅とは対照的に、とても多くの駅員がいた。観光客が多いため、いろいろ対処する必要があるからだろう。
改札の手前に立っている若い男性の前に行くと、親切そうな笑みを浮かべ、「ボンジュール、マダーム」と言ってくる。よしよし、フランスの男性はこうでなくちゃ。 |
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わたしは流暢なへっぽこな英語で「このチケットは昨日買ったものだが、ミュゼ・ドルセー駅の機械を通らなかった」と伝えた。するとその駅員、切符を機械に通してみせた。
あれほど弾き返された切符が、難なく通るではないか。
もうビックリ。駅員さん、「Good ticket」と微笑む。
礼を言って改札を通り、駅を出た。
あれはなんだったのだろう。ちゃんとした切符が機械を通らないなんて、日本ではまずないことだ。ミュゼ・ドルセー駅の機械の故障だとしか思えない。さて、娘の復路用の切符、このあと果たしてどうなるだろうか。 |