源泉を湧かしている温泉では、浴槽内の湯温は42度かそれ以上であることが多い。これまでの日本では、熱い湯に我慢して肩まで浸かる、というのが常識だった。
子どもも、そうやって育てられた。「肩まで浸かって100数えて出なさい」と、よく親に言われたものだ。
ある温泉施設に勤める男性に伺ったのだが、温泉の加温を39度にすると「ぬるい」という苦情が来るそうだ。普段の設定は42度だという。
だが、この42度という温度、当然のようにどこでも42度にしているが、なんで42度じゃなきゃいけないの? と不思議に思うことがある。
そして、どうしてお年寄りは熱い湯を好むのか。
これまでは、1)ぬるいと風邪をひくとお年寄りが思っている。2)皮膚感覚が麻痺している。
などと、勝手に想像していた。
ここではその謎を、平成17年9月17日の読売新聞夕刊の記事を元に紐解いてみたいと思う。(ちょっと大げさだったかな)
おじいさん、おばあさんが熱い湯を好むワケ
かつて東京の銭湯は、1991年まで都条例により湯温42度以上と決められていた。
実は、高温の湯に浸かると「脳内麻薬」のβ-エンドルフィンが分泌されるとの研究がある。陶酔感や多幸感を味わえるため、熱い湯でなければ満足できなくなってしまうらしいのだ。(読売新聞より抜粋)
お年寄りの熱湯好きは、ここに鍵がある。長年、熱湯で幸福感を味わってきてしまっているため、今さらぬる湯では物足りないのである。
だが、熱い湯で幸福感を味わったことのないわたしは、42度以上の熱湯は苦痛だ。どんなにいいお湯でも、この苦痛から逃れたくて、早々と出てきてしまう。
時々、浴槽から上がった直後に頭がクラクラし、目の前が緑色に染まることがある。
軽い貧血だろうと思う。まだ若い(?)から軽くて済んでるけど、これがもうちょっと年を食ったら、お風呂場でひっくり返ってしまうのではないだろうか。
そして、「なんでこんなに熱く加温するんだ。客をさっさと追い出したいのか」と、逆に苦情を申し立てたくなってしまうのだ。
熱い湯の弊害
埼玉医大助教授・倉林氏は「熱い湯に浸かると、脳卒中や心筋梗塞などの血栓症を発症しやすくなる」と警告する。
入浴時は利尿ホルモンの分泌が増え、尿が膀胱内に溜まっていく。脱水症状が進むので、血液が濃くなる。熱い湯に入ると、発汗でさらに血液の粘度が増す。
倉林助教授らは、健康な成人8人に3分間、47度のお湯に入浴してもらい、血液を調べた。すると、血を固める血小板の働きが活発になることがわかった。
血小板から「偽足」と呼ばれる突起が出て、血管壁や別の血小板とくっつきやすくなった他、血小板が血液凝固物質のフィブリノーゲンを放出し、さらに固まりやすくなっていた。
血液中には血栓を溶かす物質が存在するが、47度の湯に入ると、この物質の働きを阻害するPAI-1という物質が増えることも判明した。こうして、ますます血管が詰まりやすくなるのだ。(読売新聞より抜粋)
安全な入浴法
では、倉林助教授が提案する安全な入浴法とは?
1)42度以上の湯に入らない
2)アルコールは利尿作用を促すので、飲酒後入浴しない
3)入浴前後に水分補給する
4)浸かるのは胸まで
5)脈拍、血圧、呼吸数などが変動しやすい朝の入浴は避ける(読売新聞より抜粋)
等。子どもの頃、熱い湯に水を入れると叱られ、肩まで浸かりなさい、100まで数えなさいなどと言われ続けてきてことは、全部間違っていたのだ。
いや、子どものうちはまだいい。わたしだって子ども時代から近年まで自宅でかなり熱い湯に浸かっていたが、これまで軽い貧血はあれど、脳卒中や心筋梗塞を起こすことはなかった。
だが、年をとるにつれ、血管は硬くモロくなっていく。そして、老廃物などが蓄積して詰まりやすい状態である。
こうしたリスクを抱えた高齢者に限って、上の5つのうち3つくらいは違反していないだろうか。例えば、42度以上の熱湯を好む。朝湯に入る。深々と肩の上まで浸かる。などなど。
ぬるいなどと苦情を言うのはもってのほか。ぬる湯は、かえって体のためによかったのだ。
全国の温泉施設管理者にもの申したい。どうか、以上のことをふまえて、お湯は42度以下にしてください。
そして、苦情対策のために、「熱い湯は危険がいっぱい」の新聞記事(平成17年9月17日の読売新聞夕刊)を拡大コピーして壁に貼ってください。
「ぬる湯のススメ」は体に優しいというだけでなく、光熱費の削減にも繋がります。
42度を40度に下げたら、年間どれくらいの光熱費が浮くか、試算してみてください。光熱費の節約は、ひいては地球環境への配慮にもなります。
日本中のすべての沸かしている温泉施設でこれを実行すれば、どれくらいエネルギーの節約となるのでしょう? ぜひ試していただきたいものです。 |