なぜ温泉が体にいいのか?
温泉効果は、次の項目に挙げる作用が単独、あるいは相乗に作用して人体に影響を与えるとされます。ひとつひとつの作用だけでなく、さまざまな作用が補完しあい、総合的に影響しあって作用するのだと考えられます。ただし、この効能は即効性があるものではなく、ある程度の日数を続けて入浴する必要があります。湯治は、「1週間で湯疲れが出て、2週間で効果が出る」と言われてきました。療養目的で出かけるなら、少なくとも2週間の滞在が必要であり、即効性は期待できないと考えるべきなのです。


化学的作用
温泉に含まれる化学成分が
 a.皮膚に付着
 b.皮膚から吸収
 c.ガス成分が肺から吸収
 d.飲用により体内に吸収
されることにより生じる作用。泉質によって異なり、詳しくは下の表を参照。


温熱作用

温泉の熱による作用。
高温(42度以上)の熱い湯は、新陳代謝を活発にさせます。ただし、高齢者や血圧の高い人は注意を要します。
微温(36〜38度)の体温に近い温めの湯は、神経等を沈静化し、ゆったりとした気分にさせます。リラックス効果による症状の軽減効果が期待できます。 



水圧・浮力の物理的作用
水の抵抗のある水中での運動は効果的であり、水圧により心臓の働きが良くなります。


精神的作用
山や海などの美しい景観を見ること、あるいは日常から離れることによって開放感・リラックスを得、ストレスから開放される作用。


禁忌症ってなに? 妊娠中は入っちゃいけないの?
効能書きに必ずといっていいほど書いてある禁忌症とは、入らないほうがよいとされる症状のことです。妊娠中(特に初期と末期)、急性疾患、熱性疾患がある時、下痢の症状があるとき、他人にうつしてしまうような流行性の疾患などの時はやめましょう、ということなのです。が、「人が忌避する皮膚病」なんて記述のある温泉もあり、医学的根拠のない、差別的見地から書かれたものを見かけたこともあります。しかし、高血圧の人は食塩泉を飲まないほうがよい、というように理にかなった禁忌症もあるので、それには従ったほうがよいでしょう。

また、以下は個人的な見解ですが、「妊娠中」という記述は妥当ではない気がします。医学的には長風呂は良くないという意味合いに過ぎないのに、妊婦さんは非常に悩んでしまうからです。入浴した後になって妊娠に気づき、思い悩むこともあります。女性は妊娠すると、あるいは妊娠を計画するとき、とても些細なことで悩むものです。悩ませる割には温泉がいけないという医学的根拠は薄いと思うのですが、いかがでしょうか。不安を与えるような記述は避け、「妊娠中は長風呂を避けること」程度の但し書きで良いのではないかと思うのです。

妊娠初期は本人も気づいていないことが多いですし、普通に入浴する程度なら差し支えないと思っています。流産しやすい時期ということだけで、禁忌症に入れられている印象を受けます。万が一不幸にも流産したとしたら、温泉に入ったからではなく、もともと受精卵あるいは母体に問題があったからだと考えられます。妊娠初期であろうと後期であろうと、長時間の入浴を避ければ普段どおりに温泉を楽しめばよいのではないでしょうか。わたしは初期も後期も温泉に入っていました。

心配なら、検診のときに主治医に聞いてみるのがいいでしょう。当然、のぼせたり倒れたりするほどの長時間の入浴は論外です。
また、妊娠後期でも予定日が近い人は遠出を避けるべきですし、妊娠中毒症、切迫流産などで安静を言い渡されている人は、おうちで安静にしていましょう。
イオン組成による分類名別効能(カッコ内は旧名称)
塩化物泉

行ったことのある
温泉−塩原(栃木)


該当する温泉塩之沢(山梨)、芦原(福井)、城崎(兵庫)
ナトリウム-塩化物泉(食塩泉)
  • 別名 「熱の湯」「温まりの湯」などと言われる。
  • 温泉水1kg中に含有成分が1g以上あり、陰イオンの塩素イオン、陽イオンのナトリウムイオンが主成分のもの。
  • 含有する塩分の量により弱食塩泉(100〜500mg)、強食塩泉(1000mg以上)に分類される。
  • 日本に多い泉質。
入浴後、皮膚に塩分が付着して汗の蒸発を防ぐため保温効果がよいので、「熱の湯」などと呼ばれる。体が良く暖まるので、「子宝の湯」と呼ばれている温泉もある。
《効能》飲用すると胃液の分泌や胃腸の運動が盛んになるので、「胃腸の湯」として知られるものも多い(但し、高血圧、心臓病、腎臓病、むくみのある体調のときは、大量の飲泉は避ける方がよい)。口に含むと塩っ辛い。
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(重曹泉)
炭酸水素塩泉
ナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)
  • 別名「冷えの湯」「美人の湯」(ヨーロッパでは「肝臓の湯」)と言われる。
  • 温泉水1kg中に含有成分が1g以上あり、陰イオンの炭酸水素イオン、陽イオンのナトリウムイオンが主成分のもの(結合すると重炭酸ナトリウム(重曹)を構成する)。
  • 含食塩重曹泉や含芒硝重曹泉などのように、いろいろな種類の塩類を含むものが多い。
  • 皮膚表面から水分の発散が盛んとなり、体温が放散し清涼感があるので、「冷えの湯」ともいわれる。
《効能》重曹は皮膚の表面を柔らかくし、皮膚の脂肪や分泌物を乳化して石鹸で洗ったようにツルツルするので、古くから「美人の湯」とい
われ、皮膚病によい。また胆汁の分泌を促し、肝臓、すい臓の働きが活発になるので、胆石、胆のう炎、糖尿病、痛風、尿酸結石などにもよい。吸入やうがいをすると、たんの切れがよくなり、気管支炎や喉の炎
症を和らげる。飲用すると胃酸を中和し、慢性胃炎によい。胃酸分泌の少ない場合は、食後に少量冷たくして飲み、過酸症の場合は、食前に温かい重曹泉を飲むと効果がある。
ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉(重炭酸土類泉)
硫酸塩泉 ナトリウム−硫酸塩泉(芒硝泉)
別名 「脳卒中の湯」「中風の湯」「傷の湯」などと言われる。
  • 温泉水1kg中に含有成分が1g以上あり、陰イオンの硫酸イオンを含むもの。
  • 陽イオンがマグネシウムだと「正苦味泉」、ナトリウムだと「芒硝泉」、カルシウムだと「石膏泉」。
  • 「正苦味泉」は、世界でも数少なく、日本でも、芒硝や石膏など他の成分と一緒に少量の硫酸マグネシウムを含むものがほとんど。
《効能》硫酸塩泉の3つの泉質は、基本的には硫酸イオンの影響が大きいため、いずれも血管を拡張して血液の流れをよくするので、高血圧症、動脈硬化症によい。
芒硝泉と呼ばれるものは慢性便秘や肥満症に利用され、外傷にも効く。また胆汁分泌を促して腸の運動を盛んにするので、便秘、糖尿病、痛風、胆道疾患などに有効。
カルシウム-硫酸塩泉(石膏泉)行ったことのある温泉法師(群馬)
《効能》カルシウムに鎮静効果があるので、リウマチや打ち身、皮膚病、火傷、痔、捻挫、じんましんなどにも有効。また、硫酸カルシウムが腸や胃などから吸収されると脂肪の酸化が高められ、新陳代謝がよくなるので、便秘や肥満によい。また、芒硝泉と同じ作用もある。ただし、皮膚の弱い人や光線過敏症の人は避けるようにしたい。
マグネシウム−硫酸塩泉(正苦味泉)行ったことのある温泉万座(群馬)
《効能》高血圧を下げる効果が大きいため、脳卒中などの予防や後遺症のリハビリ、動脈硬化などに利用され、「脳卒中の湯」と呼ばれる。

特殊成分による泉質名別効能
二酸化炭素

該当する温泉−長湯(大分、含有量日本1)、新川(鹿児島)、有馬(兵庫)、稲子湯(長野)
単純二酸化炭素泉(炭酸泉)
  • 別名「泡の湯」「ラムネの湯」(ヨーロッパでは「心臓の湯」といわれる
  • 温泉水1kg中に、遊離炭酸1g以上含むもの。
    高温になると炭酸ガスの溶解度は減少するので冷鉱泉が多いが、血液循環がよくなるので、低温でもよく温まる。
  • 日本には比較的少ない泉質。
    入浴すると体に炭酸の泡が付くので、「泡の湯」などと呼ばれる。

《効能》炭酸ガスは皮膚や粘膜などの毛細血管や細小動脈を拡張する作用があるので、血液の循環をよくする。
脈拍をあげずに血液の循環がよくなるので、特に高血圧の人には心臓に負担をかけず、血圧を下げることができる。

《飲用》飲用すると、胃腸粘膜の血管を拡張して胃の運動を促進し、水分の吸収を早める。サイダーのような味がする。

鉄泉

行ったことのある温泉−伊香保(群馬)

該当する温泉薬研(青森)、有馬(兵庫)
鉄(U)-炭酸水素泉(炭酸鉄泉)
  • 炭酸イオンと結合して、重炭酸第1鉄になる。カルシウムやナトリウムを含んだ土類炭酸鉄泉、重曹炭酸鉄泉などがある。
  • 湧き出したときは澄んでいるが、空気に触れると酸化して、赤褐色になる。
《効能》血液に欠かせない鉄分が不足すると貧血症になるが、鉄泉に入浴すると鉄分が皮膚から吸収され、造血作用を高めるので貧血症の人によい。また、入浴すると良く温まるので、リウマチ、更年期障害、子宮発育不全、慢性湿疹、たむしなどによい。飲用すれば効果は一層増すが、無色透明の新鮮な温泉を飲むこと。赤茶けたお湯を飲むのはよくない。
鉄(U)-硫酸塩泉(緑礬泉)リョクバンセンと呼ぶ
《効能》コバルト、銅、マンガン、ヒ素などを含んでいる場合が多く、造血作用を一層高める。
アルミニウム泉

該当する温泉−十勝岳(北海道)、蔵王(山形)、明礬(大分)
アルミニウム-硫酸塩泉(明礬泉)
別名「眼の湯」などと言われる。
  • 温泉水1kg中に含有成分が1g以上あり、陰イオンの硫酸イオン、陽イオンのアルミニウムイオンが主成分のもの。
  • 酸性明ばん緑ばん泉や酸性明ばん泉の形で存在することが多い。
《効能》皮膚や粘膜を引き締める作用(収斂作用)が強い泉質で、慢性の皮膚病や粘膜炎症に有効で、じんましん、水虫、多汗症などによい。「眼の湯」と呼ばれる温泉が多く白内障や結膜炎に効く場合があるが、専門医によく相談のこと。
イオウ泉

行ったことのある温泉−万座(群馬)、奥日光湯元(栃木)

該当する温泉−蔵王(山形)、雲仙(長崎)、野沢(長野)、芦之湯(神奈川)
単純硫黄泉(硫黄泉)イオウを2mg/kg以上含む
日本に多い泉質。
《効能》皮膚の角質を軟化溶解するので、慢性皮膚病などによい。また硫黄には解毒作用があり、金属中毒、薬物中毒に効果がある。  
イオウ泉・硫化水素型(硫化水素泉)総イオウを2mg/kg以上含む
《効能》呼吸器官を刺激しタンを出しやすくしてくれるため、慢性気管支炎などによい。また硫化水素ガスが末梢血管を拡張させるので、動脈硬化や白ろう病などに有効。
放射能泉


該当する温泉−栃尾又(新潟・高温)、増富(山梨・ラドン含有大)、三朝(鳥取・高温)、池田(島根・ラドン含有大)、有馬(兵庫)
単純放射能泉(放射能泉)
  • 温泉水1kg中に、ラドンを20(百億分の1キュリー単位)以上含有しているもの。
  • 一般的にはラジウム泉と呼ばれ、日本でも数が少ないため珍重されている。
  • 放射性物質は浴用や飲用でも吸収されるが、気体を口や鼻の呼吸器粘膜から吸入するのが一番効果が高く、温泉地で生活するだけで自然吸入されるという。
《効能》浴用では腎機能が改善し鎮静的に作用するので、神経痛、リウマチ、自律神経などによい。また飲用すると尿の出がよくなるので、尿酸値の高い人や痛風に有効で、「痛風の湯」などと呼ばれている。
放射能泉は低温の温泉が多く、長時間入浴して呼吸器や皮膚の粘膜からゆっくり吸入するとよい。ただし湯あたりを起こす場合があるので注意。

水素イオン濃度による分類別効能
単純温泉(単純温泉) 成分上は上記までの項目に該当しないが、源泉温度が25度以上のもの。
《効能》成分が薄く、刺激が少ない。特殊成分を含んでいることも多く、医学的には効果の高い温泉が多い。「中風の湯」、「神経痛の湯」として知られ、名湯も多い。
該当する温泉−湯の川(島根、
日本3大美人の湯)、下部(山梨)、
鹿教湯(長野)、俵山(山口)
アルカリ性単純温泉
(単純温泉)
単純温泉のうち水素イオン濃度(pH)が9以上のもの
酸性泉(酸性泉)

行ったことのある温泉−草津(群馬)

該当する温泉−玉川(秋田)、酸ケ湯(青森)、須川(岩手)、蔵王(宮城・山形)、川湯(北海道)
《効能》殺菌効果は温泉の中で最もすぐれ、皮膚病や性病に古くから用いられている。水虫に良く効くと言われる。飲用では適度に薄めて飲み、低酸症や無酸症によい。味は酸っぱい。
刺激が強いので、病弱な人や高齢者、肌の弱い人は向いていないが、入浴後真湯(淡水)で流すと湯ただれを防げる。昔は、酸性泉で湯治をした人が「直しの湯」といって、単純温泉や硫酸塩泉でただれを直して帰った。草津温泉に対する沢渡温泉や川原湯温泉などがそれと思われる。