さまざまな泉質ができる理由
温泉成分を多量に含んだ熱水が地表付近で温度を低下させ、液体と気体に分離していきます。水溶性成分の方は、弱アルカリ性の高温の薄い食塩泉で、炭酸水素イオン、金属イオンなどを含んでいます。地表付近の地下水と混ざり合うと、地下水に含まれる炭酸水素イオンが付加されて、食塩−重曹泉(ナトリウム塩化物−炭酸水素塩泉)になること多いようです。

火山性ガスの方は、高温を保ったまま空気中の酸素と反応すると硫化水素が亜硫酸ガスに酸化されます。これが地下水に溶け込んだものが硫酸となり、酸性泉がつくられます。
また火山ガスが地上に出ないで地下水に直接混合すると、硫化水素に弱い酸化がおこってイオウが析出するようになり、イオウ泉となります。同時に、温泉中に銅などの金属イオンがあると、酸化反応の触媒となって水に溶けた硫化水素から直接に硫酸が生じる場合もあります。このため、火山性の硫黄泉はだいたい酸性なのです。

また、火山ガス中の硫化水素ガスや炭酸ガスは地中の割れ目を通ってすばやく移動できるので、噴気地帯から遠く離れた地下水に溶け込むことがあります。そして、単純イオウ泉や炭酸水素塩泉のもとになります。マグマが非常に地下深部に存在するとか、冷却が進んでいるとかの理由で火山噴気が地表に達しない場合でも、硫化水素や炭酸ガスだけが地表付近まで移動してきてイオウ泉や炭酸水素塩泉(重曹泉ないし重炭酸土類泉)をつくることがあります。
泉質名の表記方法「・」「−」の意味と並び順番
「ナトリウム塩化物−炭酸水素塩泉」のような「−」は違う分類項目を併記するときの区切りです。前の方は陽イオンの項目、後ろは陰イオンの項目です。次に「・」は、同じ分類項目のなかで、主成分と副成分(含有量20 mval%以上)を併記するときに使います。先に書いてある方が相対的に多い成分です。「ナトリウム・カルシウム」のときは、Na+とCa2+がたくさん入っているが、Na+の方が多いということです。


 酸性泉の特徴
件数・湧出量ともに少ないのに対して、平均温度がたいへん高く、湧出量も多いのが酸性泉の不思議なところです。


酸性が中性になる理由
酸性泉に含まれる硫酸や塩酸は強い腐食作用があるので、岩石を侵して溶かし込んだアルミニウムや鉄などの金属イオンや珪酸イオンが温泉水中に急激に増えていきます。さらに、ナトリウムやカルシウムなどのアルカリ・アルカリ土類金属イオンは酸を中和する方向に作用するので、温泉水のpHはしだいに大きくなっていきます。こうなると、酸性泉ではなく硫酸塩泉と呼ばれるようになります。pHが4.8程度までになると、炭酸ガスが水中に溶解して炭酸水素イオンが加わってきます。  


 東京が黒湯なわけ
東京湾周辺の品川、目黒、横浜あたりには、濃いコーヒー色をしたNa-HCO3型の冷鉱泉がたくさん湧出し、黒湯と呼ばれています。これらの多くは数10m〜100m程度のボーリング井戸で、上部の地層から汲み上げられています。ここの地層は千葉県茂原などの深海成の地層とは違って、干潟や沿岸湿地などに堆積したもので、植物性の腐植をたくさん含んでいます。腐植の主成分は、フミン酸とかフルボ酸とかの高分子有機物で、黒褐色をしています。この腐植が地下水に多く溶け込んでいるので、コーヒー色になるわけです。